Culture

おさんぽ案内人が行く青森・大間散歩 本州最北端のマグロ漁の町


今ではすっかり国産のブランドマグロとして定着した、大間産の天然本マグロ。イカや青魚などの餌が豊富、かつ流れの激しい津軽海峡で棲息するため、上質の脂がのり、身が引き締まっているのが特徴だ。

身の味は濃く脂の甘みも濃厚で、「大間まぐろ」のブランドで高額な卸値で取引。豊洲市場の初競りで高値がついたり、ベテランの漁師が一攫千金を狙って一本釣りで挑んだりと、大間マグロにまつわる様々なストーリーを、耳にしたことがある方も多いのでは。

大間のマグロを学べる本州最北の岬



大間は本州の最北端、青森県下北半島の先端部に位置する。東北新幹線の八戸駅からJR快速「しもきた」で下北駅まで1時間30分。さらにバスで1時間40分という、まさに最果ての漁港の町なのである。

下北駅は本州最北の駅で下北半島の玄関口
大間崎と大間を経て下北半島北西の佐井を結ぶ

大間の町を訪れる前に、まずは本州最北端の地の、大間崎へ。看板が建つ園地から600mほど沖合に浮かぶ弁天島には、白黒ボーダーの塗色の大間埼灯台が建つ。あたりの海は底が見えるほど澄み、凪いで穏やかな津軽海峡とともに、北の地ながら明るいイメージの岬である。

大間崎の周辺は園地が整備された観光スポット
津軽海峡を航行する船舶の安全を守る大間埼灯台

大間崎付近は一大観光地で、「こヽ本州最北端の地」碑と「まぐろ一本釣の町おおま石像」は、人気の記念撮影スポット。隣接するレストハウスには、2019年に豊洲市場で3億3360万円で落札された「縁起物マグロ」の顔出し看板が、津軽海峡を見下ろすように据えられている。

まぐろ一本釣の町おおま石像は一本釣り漁が題材
すしざんまいを経営する喜代村が落札して話題に

レストハウスの前には、演歌歌手の福田こうへいが歌った「一番マグロの謳(うた)」の碑があり、その年の初競りで最高値がついた「一番マグロ」を釣り上げた、歴代の漁師の名が刻印。岬の付近をめぐれば、大間のマグロにまつわる様々な記録を学べる。

「一番マグロの謳」の歌詞はマグロ漁師が作詞

漁師とマグロの闘いの場は意外に小型


大間崎から大間の町へは、津軽海峡に沿って歩いて小一時間ほど。沿岸には大間漁港関連の港湾が続いており、船溜りに停泊する小〜中型の漁船、干されている網、木造の漁具小屋などの施設が、北の果ての漁港らしい風情を感じさせる。

大間の町までは海に沿って気持ちよく歩ける
漁船の修繕を手がける揚陸ドック

大間漁協の付近が大間漁港の中心で、漁協のそばの荷揚げ場は、マグロが水揚げされ吊り上げられる場所。8月下旬から初冬にかけてが漁期で、水温が低くなるにつれて脂ののりがよくなるという。タイミングがよければ、ここで大物のマグロの水揚げに遭遇することも。

マグロが漁獲された際は家族が総出で出迎え
一本釣りで漁獲されたマグロは魚体が美しい

荷揚げ場の先には、埠頭に沿った係留施設が続き、びっしりと停泊するマグロ漁船が壮観だ。大間のマグロ漁の漁法は、テグス1本でマグロを釣り上げる「一本釣り」が主流。そのため漁船は比較的小型で、船上で漁師とマグロが、一対一の勝負を繰り広げる様子を想像してみる。

マグロ漁船のほかイカ釣り漁船も停泊
大間のマグロ漁船は2〜4トンの小型が中心

ちなみに一本釣りは、一尾ずつていねいに漁獲するのでマグロの身が傷まず、釣り上げてすぐ血抜きするので鮮度が保たれる利点も。長い幹縄から針をつけた枝縄を多数垂らす「延縄漁」とともに、漁獲されたマグロの状態がよいことも、「大間まぐろ」の市場での高評価につながっている。

町の中の酒場や神社に漁師の姿が


大間漁港沿いの道をしばらく歩くと、大間の町へと入っていく。大間橋を渡ると浜町商店街で、日用品の店舗に並び「大間まぐろ」を扱う鮮魚店も。親富幸通りと新親富幸通りは、昭和の情緒が漂う酒場街で、軒を連ねる居酒屋やスナックには、マグロ漁師行きつけのお店も多いのだとか。

「大間まぐろ」を扱う店舗にマグロのイラストが
親富幸通りと新親富幸通りは漁師の憩いの場

商店街の背後の高台には、神社仏閣が集中。大間の町を見守るように構える大間稲荷神社は、海上の神として媽祖(まそ)を祀る社。ほか、七福神が並ぶ曹洞宗福蔵寺、魚鱗一切之霊供養碑が立つ八大龍王殿、聖観音を祀る阿弥陀寺なども。

豊漁を願う漁師、安全を祈る家族それぞれの、心の拠り所である。

天妃神拝殿に媽祖が祀られる大間稲荷神社
漁師の願いが込められた魚鱗一切之霊供養碑が立つ八大龍王殿

町中には大間のマグロを味わえる飲食店も多く、漁港に近い「浜寿司」にて、マグロ丼をいただくことに。「大間まぐろ」の赤身が酢飯の上を埋め尽くさんばかりの量で、柔らかくみずみずしく実に芳醇な味わい。

トロ入り丼や中トロ丼や三食丼も人気

ゆかりの漁港や漁師町を訪ね歩いたおかげで、マグロのうまさがひとしおに感じられる、本州最北の漁港の町散歩の締めくくりである。

CREDIT
Videographer :カミムラカズマ
Support :のだ ゆうた
Support :モゲ

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