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神経損傷や手首を切断後に生じる幻肢という感覚が存在する。これは、存在しない手足があたかも存在するように錯覚する現象で、この幻肢が痛む病気を幻肢痛と呼ぶ。
幻肢痛の原因は不明で、薬などの治療方法がない病気である。株式会社KIDSの代表であり幻肢痛に苦しむ当事者の1人である、猪俣一則さんがVR技術で幻肢痛セラピーシステムを開発した。
幻肢痛とは何か、原因不明の痛みと現在のVR技術でどのように向き合うのかを取材した。
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「痛みに打ち勝つ。幻肢痛に悩む人たちに新たなリハビリ手段を」
幻肢痛って何?
幻肢痛は骨肉腫などの病気で手足を切断しなければならない人や事故などで神経損傷を起こし、手足が物理的にない人や手足の感覚が無い人におこる病気である。
彼らは目をつぶると元々、物理的もしくは感覚があった四肢があるように感じる。このような、脳で想像が出来る四肢を幻肢という。この幻肢に痛みが生じる病気が幻肢痛だ。
幻肢痛は四六時中痛いようで、症例によって痛みがさまざまである。指からくぎが出るような痛みや血管に石が流れるような痛みなどが存在するといい、我々には想像し難い痛みである。
幻肢痛は難治性の病気で、痛みを緩和させる方法も少ない。現在は薬の治療法もあるにはあるが、効果はあまりないという。患者自身がいろいろな薬を試して、その中で自分に合いそうな薬を探す必要がある。
このように専用の薬がなく、難治性の病気である幻肢痛に猪俣さんはどう向き合っているのか。
猪俣一則さんの取り組みとは?
幻肢痛に苦しむ株式会社KIDSの代表 猪俣一則さんが、VR技術を用いた幻肢痛セラピーシステムを開発した。このシステムは、従来から幻肢痛関連の研究で報告されている治療法の鏡療法がもとになっている。
鏡療法は、体の真ん中に鏡を置き、健康な側の手を鏡に映す。鏡に映っている手が幻肢が存在する方の手と重なると、両手があるように錯覚できる治療法である。これを使って、両手が動いている感覚を覚えていく。これは各地のリハビリテーション施設で実施されている。
猪俣さんもまた、この鏡療法を20数年前に試してみたが、効果があるとは思えなかったと語る。しかし、鏡ではなく、より没入できる仕組みがあれば効果が現れるのではないかと考えたそうだ。
そこで猪俣さんは当時、仕事で扱っていたVR技術を用いることで、幻肢痛に苦しむ人の助けになるのではないかと開発を始めた。このシステムの有効性として、まずは猪俣氏が当事者の1人として幻肢痛を治すことをモチベーションに取り組み始めたのだ。
VR技術で幻肢痛の軽減を促すシステム
KIDSで開発した幻肢痛セラピーシステムでは、VR上で失った腕であり、個人の幻肢を再現して視覚化する。
従来の鏡療法では、鏡で映せる手が左右対称であることが効果がない要因の1つとされている。そもそも、幻肢は元々あった手の長さより、短かったり手の位置が違ったりすることがほとんどであるようだ。
この課題をVR技術で解決している。幻肢痛セラピーシステムでは、手の長さや位置を変更可能だ。患者が各々で感じている幻肢にアジャストできる。このシステムでは、開発中に検証した訓練コンテンツの中で、有効であるコンテンツをブラッシュアップして実装している。
開発には、最初の臨床まで1年間を要した。現在は東京、広島、そして奈良の畿央大学の3か所で体験できる。そして、患者自身で訓練できると判断できた場合は、在宅でもできるようにシステムは構築されている。
猪俣さんの目指す未来とは?
幻肢痛という言葉を周知してもらうこと。そしてシステムがもっと全国に広がるようになることを目指す。全国の幻肢痛を患っている人を救って笑顔になってもらいたいという。
「患者さんが心も体も健全になれることが目標である」と語っていた。
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VR技術が原因不明の痛み 幻肢痛を治療する助けになるかもしれない。