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と、兼ねてから語っていた落合陽一氏が、半年でひとつの答えに たどり着いた。
4月22日、丸の内にある東京国際フォーラムで、日本フィルハーモニー交響楽団主催の「耳で聴かない音楽会」が開かれた。このコンサートは、聴覚支援システムというテクノロジーを活用して、聴覚に障害のある方も楽しめる、というコンセプト。
落合氏はその中で、聴覚支援システムを担当した。
筑波大学の研究室の学生、ピクシーダストテクノロジーズのメンバーと、自身が代表を務めるCREST xDiversityのメンバーと共に、昨年からデバイスの構想を練り、今年の2月から聴覚障害者とのデバイス実験数回行い、トライアンドエラーを繰り返し、3つの異なるデバイスを開発。
本番を迎えた会場には、聴覚障害のある方が60名以上、クラウドファンディングの出資者等、大人から子供まで計230名と、多数のメディア関係者が殺到し、会場を埋め尽くした。
聴覚に障害がある人も、ない人も、一緒になってモーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』の第1楽章を振動と光とともに楽しんだ。
というのが、ウェアラブルデバイス「オーケストラ・ジャケット」を着て、ラデツキー行進曲の指揮を体験する場面だ。
有志で募ったこの体験に、手を挙げたのは、聴覚に障害のある人たちばかり。身体に響く低音や振動を頼りに、両手を振り上げて指揮していた。そのうちの一人が「これで初の聴覚障害者の指揮者が誕生しました」と嬉しそうに話していた。
この歳になって、やっと本物のオーケストラをちゃんと楽しむ事が出来ました
3歳から耳が聞こえなくなり、音楽から遠ざかっていた女性。
吹奏楽をやっていた娘さんの演奏会には何度も行ったが、ちゃんと楽しむことは出来なかったという。その娘さんから、今回の話を聞き、愛知県から来場された。
装着している人工内耳では、音の強弱は伝わってくるが、音楽の細かい部分、リズムや、何が音を奏でているのかが、わからなかったそう。
しかし、このコンサートでは、デバイスや演奏中の楽器を、リアルタイムにスクリーンに映し出し、弦楽器の振動を可視化するなどの、細かな配慮がなされていた。だから、“本物”のオーケストラを“ちゃん”と楽しめたのだという。
聴覚の障害にテクノロジーが勝っている
コンサートを終えたばかりの落合陽一氏が、今回の試みに対する感想を語ってくれた。
小学生ぐらいの子どもが、リズムを取ってたのが良かったです。やっぱり子供はダマせないから。
「耳が聞こえない人をイメージする」というのは、耳が聞こえる人にはすごく難しい。ともすれば、感動の押し付けになりやすい。人に「楽しい」を強要されるほど、つまらないことはないじゃないですか。そういう風にはなりたくなかったので、子どもの反応が嬉しかった。強要されなくても楽しいのだな、と実感できました。
このコンサートが、耳が聞こえる人にとって楽しくない、普通な体験だったとしても、耳が聞こえない人に楽しかったならば、僕らのチューニングは成功していたと思っていて、それは、結構頑張ったと思います。
完全に聞こえない人って意外といなくて、完全に見えない人も意外にいない。
その分だけ、刺激を与えれば、その分反応も返ってくる。現代の「聴覚」というのは、音声認識機能を使えば字幕が出るし、補聴器や人工内耳を使えばある程度聞ける。テクノロジーの方が今は勝ってる。ハードウェアだけでなく、機械学習技術を用いれば、まだまだ改善できることもたくさんあるように思える。
僕が思うに、聴覚が悪くなってしまった人たちが、どうやって自分の聴覚に合わせて、Hackableにするか。つまり、自分で情報技術を取り入れて、自分で使えるようにしてくれるか、今回がそういう事を考えるきっかけになればいいなと思う。
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「耳の聞こえない人も楽しめる音楽」というのは、音楽の新しい形の第一歩だったかもしれない。
4月22日は、「音楽アップデートの日」という祝日が制定されてもおかしくない、とさえ思えた日曜日だった。
さらに、今年の8月27日には、「落合陽一×日本フィル プロジェクト VOL.2」が開催されることが決まっている。
次は、落合陽一がテクノロジーを使って、どんな試みをするのかが楽しみだ。
2018年8月27日(月)19:00開演
@東京オペラシティコンサートホール
指揮:海老原光 / 演出:落合陽一 / ビジュアルデザイン:WOW