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千葉駅から内房線で木更津へ向かい、そこからJR久留里線のディーゼルカーに揺られること約45分。房総半島のほぼ中央に位置する久留里は、かつての城下町の風情を残す「名水の里」である。
町のいたる所に井戸が点在し、良質な地下水が絶え間なく湧き出るこの地は、古くから豊かな水とともに歩んできた歴史を持っている。
久留里駅前の交流広場には、自由に名水を汲める「名水水汲み広場」が設けられている。市街地を歩けば数多くの井戸に出会うが、その多くは無料で開放されており、遠方からポリタンクを携えて訪れる人も珍しくない。
生活の場に当たり前のように清冽な水がある光景は、訪れる者の心を穏やかに潤してくれるはずだ。
この鉄筒のある風景は、久留里ならではの象徴的な意匠だ。水温は年間を通して約15度に保たれ、冬は温かく夏は冷たい、まさに自然の恩恵そのものである。
こうした久留里の水景を支えるのが、江戸末期に確立された「上総掘り」という独自の技術だ。竹ひごの弾力を利用して鉄管を打ち込み、深い地層まで掘り進めるこの手法は、高い水圧による自噴を可能にした。
地中の水脈から力強く湧き出す水は、町のあちこちで潤いある豊かな風景を描き出しているのである。
新町の中心部には、江戸初期の寛永年間に掘られた「久留里の大井戸」がある。かつては町唯一の水源として、人々ののどを潤した。また「新町元井戸」は地下652mから毎分400リットルという圧倒的な湧出量を誇り、岩組の水場は実に豪快だ。
店先に立つ昭和初期の鉄筒からは、今も地下400mから湧き出す水があふれ、酒造りの現役の源として活躍しているのだ。
1885年(明治18年)創業の須藤本家には、深さ500mという日本有数の深さの自噴井戸がある。洗米から仕込み、清掃に至るまで、すべての工程にこの贅沢な地下水を使用する。
代表銘柄「天乃原」の純米吟醸は、キリッとした辛口ながら、水のまろやかさが余韻として残る逸品。店先の湧水に触れると、その清涼感に驚かされる。
駅前にある「生きた水久留里酒ミュージアム」は、酒好きにはたまらない聖地だ。「かずさ八蔵」の銘酒が揃い、サーバーで試飲も楽しめる。レジでメダルを購入し、お猪口を手に好みのボタンを押せば、好みの蔵の一杯が注がれ、各蔵のはしご酒だって楽しめる。
久留里の町には、江戸時代から大切に守られてきた水文化が、今も鮮やかに息づいている。井戸を巡り、冷たい水でのどを潤し、仕上げに地酒を味わう。名水の里を歩けば、自然の恵みを敬い、共に生きてきた日本人の原風景が、清らかな流れとともに心に染み渡っていく。
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