Culture

おさんぽ案内人が行く新しい広島散歩 スタジアムパークからアートなアパートへ

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広島電鉄の広島駅乗り入れを機に、注目が高まっている広島。近年オープンした新スポットも賑わっており、それらと合わせて現在の街の様子を実感できるエリアを軸にした、散策ルートをたどってみた。

駅前のスロープを登って新装された駅ビルへ乗り入れる
明るい雰囲気の新しい広島電鉄広島駅

スタートは広島駅2階から、広島電鉄の路面電車に乗車。八丁堀経由で原爆ドーム前電停まで乗ってみたところ、駅前大橋通りの経由に変わり、従来の駅前の大回りで混雑するエリアをショートカットしたため、かなり早く着いた印象。新駅の話題性だけでなく、今後は中心市街地へのアクセス改善の効果も見込めそうだ。

JRの改札口から上り下りなしで乗り換えられる
新しい線路は駅前大橋を経て市街の中心へ至る

公園の一角に残る広島カープの思い出


原爆ドーム前電停が最寄りの「ひろしまゲートパーク」は、広島市民球場の跡地を再開発した都市公園。ステージを設けたイベント広場を囲むように、飲食物販店が入った商業施設の建物が並ぶ。広島の中心市街地には、こうしたゾーンがこれまでなかったので、市民の交流と賑わいの場としての効果が期待できる。

中央の広場がひろしまゲートパークのイベントスペース
ハイソなたたずまいの飲食物販店が集まる

パーク内には原爆関連の史跡がいくつかあり、芝生や街路が整えられたのに合わせて、体裁が整えられた。広島市街は戦後に建築家の丹下健三が都市整備した際に「平和の軸線」と呼ばれる南北のラインを設け、平和記念公園や原爆ドームなどの配置をはじめ、その線を意識した街づくりがされた。パークの西側に「ピースプロムナード」と称する舗道がそのライン上に設けられ、原爆で焼けた石を「平和の敷石」と称して並べている。

平和の軸線上に位置するピースプロムナード
中央に原爆で焼けた「平和の敷石」が並ぶ

パークの敷地内には以前、広島市民球場のライトスタンドの一部が保存されていた。このたびの整備時に、その一部が「勝鯉の森」の前へ移設。広島カープの優勝や、衣笠祥雄の連続試合出場記録を記念した碑が並ぶ一角で、まさにカープの偉業のメモリアルを眺められる位置。ほか、ホームプレートとピッチャーズプレートがあった場所には、記念の銘板も埋め込まれていた。

座席があった球場内の場所を示すプレートも設置
勝鯉の森に並ぶ広島カープの記念碑の数々

新時代のスタジアムでの活躍を夢見る子どもたち


ゲートパークの北側の「ひろしまスタジアムパーク」は、球技場の「エディオンピースウイング広島」を中心に整備された都市公園。球技場に隣接する「Hiropa」は広大な芝生広場を中心とした園地で、ピースウイングを背景にして地域の子どもたちがサッカーに興じる風景が印象的。芝生広場に面して飲食物販の商業施設が並び、本川側の園地ではすべて貸し出しでのバーベキューも楽しめる。

スタジアムの入口に立つモニュメント
デッキから見下ろせるHiropaの芝生広場

エディオンピースウイング広島は、J1リーグ・サンフレッチェ広島のホームスタジアム。広島中央公園を整備して建築され、繁華街の紙屋町に近く広島電鉄の電停ほかアストラムラインやJRの新白島駅、横川駅など交通アクセスが至便な、街中スタジアムとなった。外観は名の通り翼をイメージしており、本川の対岸から見ると両翼が展開しているのが分かる。スタンドの四隅がオープンになっていて、開放感があるのも特徴。

収容人数は28520人。国際試合も開催される
スタンドは本川側がメインスタンドになる

Hiropa側のバックスタンド入口で目をひくのが、横幅8m62㎝、高さ2mの巨大壁画「Peace Wall」。『キャプテン翼』原作者の高橋陽一氏が特別に書き下ろした作品で、ワールドユース優勝の際の翼くんの「サッカー世界平和宣言」のスピーチの場面が描かれている。背景にはこの壁画オリジナルで、ピースウイングほか原爆で被災した当時の広島の街の様子がリアルに描かれ、かなりのインパクトがある。

Peace Wallには世界各地の戦場も描かれている
スタジアムに並んで原爆ドームの絵も

スタジアムにゆかりある戦争のレガシーも保存


バックスタンド側は数列分の座席が常時開放されているほか、オフィシャルショップ、サッカーミュージアムなどが見どころ。また2階のコンコースには、スタジアム建設の際に寄付を行なった企業や市民の芳名板が配され、カープの樽募金を思わせる広島らしい伝統を感じさせる。個人の寄付の総計は6億4000万円で、地元企業のエディオンが30億円、マツダは20億円の企業寄付をしたと報道されている。

広島ゆかりの企業が多数名を連ねている

また、かつて広島城の周辺は陸軍関連施設が広がっていて、スタジアム建設の際に輸送部隊「中国軍管区輜重兵補充隊」の遺構が出土して話題になった。スタジアムの南側の通りをはさんだ本川端に、軍馬の施設の敷石とアスファルトの一部が保存され、スタジアムがあった地の歴史をとどめている。

連隊では300頭の馬を飼育。そばには馬の慰霊碑も立つ

レトロアパートは話題のアートスペース


広島スタジアムパークの北側に広がる「市営基町高層アパート」は、周囲の戦災・原爆のスラムや不法住宅の撤去に関係して造られた、高層住宅群である。1978年(昭和53年)築と古いながら、最高20階もあるその見た目はかなりモダン。ル・コルビュジェの影響を受けた大高正人による設計は、日照とプライバシーに配慮した、くの字が折り重なりながら伸びたレイアウトが独創的だ。

鋭角なデザインが連なるのが特徴の基町アパート
アパートを構成する棟は「コア」と呼ばれる

このアパート、当時にしては先進的なもう一つの特徴として、建物群の中央に公共スペースを設けたことが挙げられる。人工地盤の上を緑化した広場に、その下を放射状の通り沿いにショッピングモールを設置して、建物群とまとめたひとつの「街」の構造になっている。

人工地盤の下のショッピングモールは四方が対称の構造
カフェや食事処、酒場も軒を連ねている

最近は若い世代の入居も進み、ショッピングモールのアートやイベントでの使用も。「基町プロジェクト」と題し、アパートの模型があり運営事務所も置かれた基町資料室、M98やユニテもいったアートスペースの設置、Alternative Space COREの壁画やアートウィンドウなど、歩いていてそれらしい施設や設えも見られる。

閉店した店舗を活用したシャッターアート
直線的なデザインが印象的な基町高校の校舎

基町アパートの周辺にはほか、京都駅を設計した原広司氏が校舎を設計した基町高校があり、シーラカンスを模したシェル型のアストラムライン新白島駅まで歩いて散策は終了。路面電車に乗って、新たな広島の魅力を訪ねる散策に、ぜひ出かけてみては。

より詳しい動画はこちらから視聴できます。

CREDIT
Videograp :カミムラカズマ
Support :モゲ

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