今回は、世界的にも珍しい、頭蓋骨に特化した「シャレコーベ・ミュージアム」 を紹介する。
このミュージアムは、頭蓋骨学の権威・河本圭司教授が 30年間におよぶ頭蓋骨研究とシャレコーべの文化的な探求に伴い、世界中から収集した総点数約8千点ものコレクションを一般公開している私設博物館である。
脳外科医ならではの本物の頭蓋骨標本、メキシコ、ペルー、ネパールなどの世界を旅して集めた歴史的民族的なドクロたち、Tシャツやフィギュアなどのスカルグッズの品々まで、頭蓋骨についての医学と文化が楽しく学べるようになっている。
館長である河本教授は、2019年に逝去され、ミュージアムは娘さんが引き継いだ。しかし、経営困難で閉館危機にあり、クラウドファンディングを実施中、期限は2025年2月28日まで、みんなで応援しよう！
若い人たちに頭蓋骨のことを知ってもらいたい
筆者は、頭蓋骨に穴を開ける身体改造「トレパネーション」の取材の際に、河本教授にお世話になった。生前、河本教授はミュージアムを作った理由をこう語っていた。
「シャレコーベというと、特に日本では不気味なもの、気持ちが悪いものというイメージが強い。でも、このミュージアムはお化け屋敷みたいなところではなく、解剖学や人類考古学といったサイエンスと、メキシコ、ペルーといった各国のシャレ コーベ文化という、二つの側面を見れるようにしています。ぜひとも若い人たちに来てもらって、頭蓋骨のことをもっと知ってもらいたい」
河本教授は、頭蓋骨腫瘍の研究において、医学の世界では先駆的な存在で、正常な頭蓋骨、異常な頭蓋骨、病気の頭蓋骨を比較研究し、その成果を『アトラス頭蓋骨学』（メディカ出版）という学術書にまとめている。
また、学会等で世界を旅するとき、医学標本や博物館を見て廻り、シャレコーベにまつわる歴史的文化的な地を訪れてきた。そのような文化面での探求は『シャレコーべの謎紀行』（メディカ出版）や『人類の遺産 スカルを探ねて』（リブロ社）に詳しい。
そして、河本教授の活動の成果をわかりやすく集大成したのが、シャレコーベ・ミュージアムである。そのコレクションは、医学標本にとどまらず、グレイトフル・デッドのTシャツから韮沢靖のフィギュア、各種のハロウィン玩具と、スカルグッズの収集だけでも質と量ともに群を抜く。海外の民族コレク ションでは、中国清時代の死刑執行の印、チベットの頭蓋杯、 ネパールの髑髏王冠と、ひとつひとつのポテンシャルが高い。 芸術品としては世界最大級のクリスタルスカルをはじめ、芸術家や職人にオーダーして作らせた特注品も多い。
そして、何より河本教授のアイデアを設計に取り入れたミュージアムの建物が凄い。正面入口からシャレコーベの外観を持ち、路上に面し た背面の縫合線の模様が印象的である。
館長自身の頭蓋骨を展示する夢も叶った
このミュージアムでしか見れないものに、河本教授自身の3D頭蓋骨模型がある。
「自分の頭蓋骨を展示したいというのが長年の夢でした。遺言を残せばいいと思いましたが、いまはCTスキャンデータから3D頭蓋骨模型を作れます。そこで、脳外科、神経学、人類考古学のトップにも永久保存したいと願いました。いまは、 中国、韓国の脳外科のトップの頭蓋骨模型も保存されています」
そう語る河本教授、高いインテリジェンスと医師ならではのぶっ飛んだ探究心が素晴らしい。
世界でも唯一の貴重な展示物が目を惹くと同時に、グッズやTシャツのコレクションは肩肘張らず、より幅広い層にアピールするものである。とはいえ、私設博物館ゆえの運営の難しさもあり、存続が危ぶまれてもいる。ぜひともこのチャンスにコレクションの実物に触れて欲しい。
人類の歴史と文化が詰まった頭蓋骨は最高だ！
シャレコーベミュージアム
