今回は、ドイツの国際芸術祭ドクメンタをご紹介する。
ドクメンタは5年に一回、ドイツのカッセルで開催されるもので、もともとナチス政権が現代アートを排斥したことを反省し、現代アートを奨励するために1955年に始まった。
歴史の長いイタリア・ヴェネチア国際芸術祭に対抗するように、ドクメンタは、アートの批判性と社会性を強調してきた。
たとえば、2012年のドクメンタでは、カデル・アッティアが修復されたアフリカ民族彫刻と第一次大戦時の負傷兵の顔写真を並べ、民族的な身体装飾とも対比して美意識の逆転を試みた。それはカウンターカルチャーを追う筆者にアートの批判性を気づかせてくれた。
美術館以外の地下通路や倉庫、使っていない駅などでも展示することで、アートと街が溶け合う様子は社会派のドクメンタならではの光景である。
また2017年のドクメンタでは元豆腐工場でパリ人肉事件の佐川一政のドキュメンタリーが上映されて物議を醸した。
2022年のドクメンタではタリン・パディの作品が大論争に
2022年のドクメンタでは、インドネシアのタリン・パディの巨大垂れ幕が反ユダヤ主義的であると批判され、大論争の末に撤去されることとなった。
それでもタリン・パティの作品は別会場ハレンバート・オストに多数展示されており、 パワフルで素晴らしいゆえに擁護者と批判者の激しい論争となったことがよくわかった。
インドネシア政府とも闘ってきたタリン・パティの作品を観れたことは貴重であった。
またハイチのアティス・レジスタンスは、キリスト教会に本物の人骨を用いてブードゥー教の精神性を表現したオブジェ作品を展示して圧倒した。
2022年のドクメンタでは、主にグローバルサウス(アフリカ、アジア、南米など、資本 主義によって負の影響を受ける地域)の53のアートコレクティブにオファーし、それぞ れのコレクティブに作家や作品のセレクトを任せることで運営側も把握できないほど作り手の数は膨れ上がり、その総数は公式参加のアーティストを含め、1500人を超えたという。
そんな驚くべき芸術祭を国際規模で実限させてしまえるのもドクメンタならではだろう。
ところで、ドクメンタの開催期間中、カッセルの街中で勝手に展示をする作家は多く、2017年は筆者も場所を借りて、一日だけ勝手に展示を行い、カウンター視点からの問題提起に挑んだ。
ドクメンタで実感した、僕らも未来を探し続けろ!