おさんぽ案内人が行く北海道・中富良野　四季を彩る花の公園をめぐる

北海道の中富良野は、日本で最も歴史あるラベンダー畑を有するファーム富田をはじめ、季節の花々を鑑賞できる公園が集中している。可憐なラベンダーのイメージが強いが、晩夏から秋にかけては色鮮やかな花々が咲き乱れ、夏季とはまた違った印象を受ける。

スキー場のゲレンデを活用した花の丘

JR富良野線の中富良野駅から歩くこと10分ほど。「北星山ラベンダー園」は町の西寄りにそびえる北星山の斜面に広がる、町のシンボル的な花畑である。冬場はスキー場のゲレンデとして利用される斜面が、夏から秋には色とりどりの花々に覆われ、鮮やかな丘へと姿を変える。

斜面の上部には展望台が設けられ、花畑を見下ろしながら登れる観光リフトも運行。斜面の下部には一年草の花畑が配され、散策路沿いにはマリーゴールドのオレンジやケイトウの赤が色鮮やかに彩る。マリーゴールドは春先から秋口にかけて、花期が長いことで知られている。

マリーゴールドに並んで、紫と赤の二種類のサルビアが植えられ、その上部から山頂にかけてはラベンダーが栽培。この季節は濃緑の葉だけが見られるが、花期の7月中旬～8月上旬には、斜面一帯が紫色のグラデーションに包まれ、幻想的な風景が広がる。

富良野屈指の花の公園は秋も見頃

北星山ラベンダー園から徒歩15分ほどの「ファーム富田」は、富良野エリアを代表する観光農園である。広大な敷地に国内最大級のラベンダー畑をはじめ、10以上の花畑や温室を備え、四季を通じて80種類以上の花が咲き乱れる、彩り鮮やかな花の農園だ。

入口に最も近い「花人の畑」では、区画ごとに植栽された花々が描き出す色彩が、まるで虹のよう。ウェルカムハウス「花人の舎」の前から、黄・赤・白のキンギョソウに続き、紫と白のサルビア・ファリナセア、正面には赤と黄色のケイトウが並び、暖色系の花の帯が連なっている。

「彩りの畑」は、季節ごとの花々がゆるやかな丘を彩る畑。秋の彩りの畑では、黄色やオレンジのマリーゴールド、赤・白・ピンクのベゴニアが見頃だ。ベゴニアに続いて咲く白・ピンク・紫の花は、初夏から秋にかけて開花するゴマノハグサ科のアンゲロニア。畑は中富良野の田園地帯から、まるで十勝岳連峰へと続くように広がっている。

ラベンダー栽培のルーツの畑で花へ想いを

花人の畑の北側に広がる「倖の畑」では、「ようてい」「濃紫早咲」「おかむらさき」「はなもいわ」の4種のラベンダーが栽培。色合いの違いに加え、早咲きから遅咲きまで開花期がずれており、長い期間にわたってラベンダーを鑑賞できるようになっている。

ファーム富田のラベンダー栽培は、創始者・富田徳馬の孫である富田忠雄が、1958年（昭和33年）に開始。香料やオイルの製造が目的で、これを契機にラベンダー栽培は、富良野全体へと広がっていった。敷地西側のトラディショナルラベンダー畑は、ファーム富田の原点であり、日本で最も歴史あるラベンダー畑である。

富良野のラベンダー栽培は昭和40年代に最盛期を迎え、畑の総面積は230haに及ぶ一大産地となった。しかし、安価な合成香料や輸入香料が流通し始めると、ラベンダー香料の相場は急落し、その影響で多くの農家が栽培をやめることになってしまう。
苦境からの転機となったのが、1976年（昭和51年）の国鉄の5月のカレンダーに掲載された、ファーム富田のラベンダー畑の横を列車が走る風景写真。これに惹かれて多くの観光客が訪れるようになり、観光地として脚光を浴びるようになった歴史がある。

彩りあふれる花畑を鑑賞しつつ、花期を終えたラベンダー畑で当地の歴史に思いを馳せながら、秋の丘で花めぐりを楽しむのも、この季節ならではの中富良野散歩の魅力だろう。

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