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サウジアラビア第2の都市、ジェッダで行われた大規模イベント「
Jeddah Season 2022」を取材してきました。会場には大がかりなアニメゾーンが設けられ、日本のアニメを中心に盛り上がりをみせていました。
2018年まで表だってエンタメが認められていなかった国とは思えないほど、人々は今、エンタメを全身で楽しんでいます。
サウジアラビアは怖い?
取材をするまで、サウジアラビアには「なんとなく怖い」という印象を持っていました。サウジアラビアというより、紛争の多い中東全体へのなんとなくの印象です。
しかし、取材で出会ったサウジアラビアの人たちは皆、好意的で親切でした。日本が好きで、片言でも日本語をしゃべる人たちが意外と多いことにも驚きました。
取材中にサウジアラビアの伝統的な頭巾を見つけ、それをかぶるようにしてからはより一層、ジェッダの人々が話かけてくれるようになりました。スーパーやショッピングモールの店員さんやお客さん、ホテルの警備員、もちろんイベント会場でもなんども「珍しい日本人」として写真撮影を求められました。
こんなにモテモテになった経験はありません。お酒でも入れていれば、このままサウジアラビアに住んじゃうか、なんて気分になってしまいそうです。
エンタメ解放からわずか数年
ちなみに、サウジアラビアにアルコールはありません。残念ですが移り住むことは難しそうです。
イスラム教発祥の地であるサウジには、人々が大事にしている厳しい戒律があります。アルコールだけでなく、ありとあらゆるエンターテイメントも禁じられていました。
サウジアラビアは2018年のエンタメ解放まで、遊園地や映画といった娯楽がなかったのです。戒律で旋律が禁じられているため、音楽はメロディもNGとされてきました。
もちろん、お酒もエンタメも全くなかったわけではないでしょう。しかし、多くが表だって禁じられていたのです。
また、女性は一人で出かけることも困難でした。自動車の運転が認められたのも2018年に入ってからです。
女性は家族以外との外食もできませんでした。その名残で、レストランの入り口にシングルゲートとファミリーゲートのある店もありました。「シングル」は男性のぼっち客用だったそうです。
日本のエンタメの中東進出
2018年より、一気にエンタメを解放したサウジアラビア。2019年には首都のリヤドでアニメエキスポも開かれ、日本のアニメコンテンツが一大ブームとなっています。
さらに、サウジアラビアの建国記念日には、日本の花火が打ち上げられました。伝統としての花火ではなく、最新技術とエンタメを織り交ぜた夜空を彩る「STAR ISLAND」(スターアイランド)です。
未来型花火エンターテインメントとも言われるスターアイランド。日本では2017年より、お台場や豊洲で3度に渡って実施されました。また、海外ではシンガポールでも行われ、夜空を彩るイベントがサウジの建国記念日に行われました。
こうしたイベントを手がけていたのがエイベックスでした。政府が主導する今回の「Jeddah Season 2022」も彼らが日本のアニメコンテンツをプロデュースする形で輸出に成功しています。
日本のアニメ村
アニメビレッジと名付けられた、日本のアニメ体験パビリオンは、イベントの中心的な場所に設置されたメインコンテンツと言えるものです。
機動戦士ガンダムや進撃の巨人、NARUTO(ナルト)、キャプテン翼、ハローキティ、パックマンなどのさまざまなコンテンツが出展していました。来場者の年代や性別は幅広く、皆それぞれの「推し」があるようです。
たとえば、娘を連れた中年のお父さんはガンダムやキャプテン翼のコンテンツを一緒に楽しんでいました。とくにキャプテン翼がお好きな様子。息子とパックマンのVRを楽しんでいたお父さんには「おつかれさまです!」と日本語で言われました。
進撃の巨人やNARUTO、そしてヒロアカの展示などは、若い家族連れやカップルに人気。好きなキャラクターと自身のスマホでツーショットを撮る姿を何度も見ました。ハローキティは圧倒的に女性に支持されており、ワイワイとはしゃぐ様子はサンリオピューロランドのようでした。
日本が好きの声
こうした日本のコンテンツが集まる空間ということもあり、非常に多くの来場者が日本語を知っていました。また、アニメソングのDJイベントでは、来場者が一緒になってアニソンを歌っていました。
参加者に話しを聞くと、日本のアニメやドラマで日本に興味を持ったようです。日本語を勉強中だと話してくれた女性は、ハローキティが大好きで、近く日本へ旅行すると言っていました。
日本の袴のような服を着ていた方は、少女マンガが大好き。アニメで着物の美しさを知って、自分で服を作ったそうです。日本のゲームコンテンツが好きという男性は、仕事で日本の会社と取引があると語ってくれました。
彼らはアニメやゲームを通して日本のコンテンツに触れ、日本が好きになったようです。しかし、そうした特別な日本好き以外、街中で出会う人たちが日本人だとわかると非常に好意的であることに気づきました。
好きのワケ
そのことがすごく不思議で、イベントを運営するセラ社のライアンさんに伺うと、サウジアラビアの人たちが日本人へ尊敬に近い感情を持っていることがわかりました。
サウジアラビアは王政の国であり、伝統を重んじる国です。日本にも保守的で伝統を大切にする部分がありますが、その点が共通しています。また、経済的に成功した日本の集団的な秩序に対し尊敬もあるようです。
たとえば、サウジアラビアのテレビで紹介された日本の日常は、彼らに驚きをもって受け止められました。
学校の授業が終わると、掃除当番が掃除をする。日本ではごくごく当たり前の風景でしょう。しかし、仕事ではないのに学生たちが自分たちで教室を掃除する、それはびっくりすることのようです。
また、工場で8時半から仕事を開始する労働者たちが、8時15分には集まり、皆で体操するというのも集団の秩序がある姿にうつったようです。そういった習慣のないサウジの人たちからは、勤勉な日本人はすごい!と捉えられているようです。
2019年まで観光ビザがなかった国なので、そもそも仕事以外でサウジアラビアに入る日本人が非常に少ないというのもあるかもしれません。日本人を代表する気持ちで、ちょっと背筋が伸びました。
急速に近代化しようとするサウジアラビア。「Jeddah Season 2022」では4月まで何もなかった土地に、わずか数ヶ月でエンターテイメントの拠点を作りました。この地にはもう少しで地下鉄も開通する予定です。
ジェッダに限って言えば、まだあまり観光地が整備されていませんが、中東がぐっと近くに感じられました。なにより日本が好きだ言われ、なんだかとてもくすぐったいうれしさがありました。
日本のアニメやゲームを通じて、世界中に日本好きが増える。それってステキな未来に繋がりそうじゃありませんか?