〈プロ解説〉スタッドレスタイヤの寿命は? 交換時期や長持ちのコツも
雪が積もったり凍ったりしている路面でもすべりにくいスタッドレスタイヤは、降雪地域でクルマを使う人やウインタースポーツを楽しむ人にとって必需品です。
スタッドレスタイヤの買い替え時期は、摩耗だけでなくゴムの劣化などいろいろな条件が関わってきます。一般的には、夏タイヤよりも寿命が短いと考えていいでしょう。今回はスタッドレスタイヤの寿命や長持ちさせるコツについて説明します。
目次
3~5シーズンが寿命、使用状況で違い
筆者撮影
スタッドレスタイヤがいつまで使えるかは気になるところですが、「何年使ったら寿命」とか「何千キロ走ったら寿命」という正確な基準はありません。使う環境によって、タイヤのすり減りや劣化の状況に大きく差が生じるからです。
目安としては、東北や北海道などで凍った路面を走ることが多い場合、3シーズンを限度として考えたいところ。いっぽうで東京、名古屋、大阪など雪があまり降らず、氷の上を走ることがほぼない地域であれば、しっかりと保管すれば5シーズン程度は使うことができるでしょう。
交換時期の判断、2つのポイント
タイヤの交換時期には、「タイヤがすり減って寿命」と「ゴムが劣化して寿命」の2つのパターンが存在します。スタッドレスタイヤの場合、「雪道を走るタイヤとしての寿命」にも注意しなければいけません。
残り溝50%の段差が現れたら
一般的には「スリップサイン」と呼ばれる、残り溝の深さ1.6mmを示す部分が現れた(溝がなくなった)ら、タイヤとしての使用限度です。
そこまで使っていいということではなく、すり減って溝が浅くなったタイヤは濡れた路面でスリップしやすくなるので、スリップサインが目立つ前に交換が必要といえます。
いっぽう、雪道を走るタイヤとして考えたときには、それよりも早い段階で交換時期が訪れます。
スタッドレスタイヤの接地面には、「プラットフォーム」と呼ばれる「残り溝50%」を示す段差が付けられています。この段差が現れたら、そのタイヤはもう雪道走行に適していません。
▼残溝の点検ポイントについてわかる、ダンロップ社の公式動画がこちら
ゴムが劣化して、すべりやすくなる
筆者撮影
ゴムの柔らかさは性能のために重要ですが、時間の経過とともに劣化して硬くなります。硬くなるとタイヤがしなやかに路面に接地できなくなることですべりやすくなり、ある程度硬くなると「ゴムの劣化により寿命で交換」となります。
スタッドレスタイヤの場合、この劣化を夏タイヤ以上に真剣に考える必要があります。ちょっとした劣化が、氷の上でのすべりやすさに結びつくからです。
使い始めがもっともすべりにくく、使うほどすべりやすくなります。凍った路面を走ることが多い人ほど、交換時期が早く訪れると考えればいいでしょう。
ポイント解説
ゴムは、作られた瞬間から劣化が始まります。製造年月も重要ですが、未使用品でしっかり保管されていれば、数年以内なら心配する必要はありません(使用開始後の劣化に比べれば影響が少ないため)。しかし、使い始めると一気に劣化が進みます。どんなに長くても使い始めてから5シーズンを目安に、新しいタイヤへ交換しましょう。
スタッドレスタイヤを長持ちさせるコツ
スタッドレスタイヤを長持ちさせるには、適切な保管方法や使い方を知っておくことが大切です。それぞれのポイントを解説します。
適切に保管する |直射日光を避け、平積みで置く
ゴムを劣化させないために、直射日光を避け、温度変化が少なく通気性の高いところで保管するのが理想です。
置き方は縦置き(クルマへ取り付けた状態のように立てて置く)だとタイヤの一部分に負担がかかって変形する可能性があるので、平積みとしましょう。
路面にあわせて使用する|積雪がない時期は夏タイヤに
筆者撮影
積雪路や凍結路において役立つスタッドレスタイヤは、接地面に氷の上でのグリップを高めるための細かい溝が刻まれています。乱暴な運転だとタイヤに負荷がかかり、その細かい溝が荒れてしまうのです。
また、スタッドレスタイヤのゴムは柔らかいのですり減りやすく、積雪がない舗装路での運転は劣化を早めてしまいます。すり減りを抑えるには、丁寧な運転操作を心がけるとともに、舗装路はできるだけ走らないほうがいいでしょう。
ポイント解説
スタッドレスタイヤはずっと履きっぱなしにするのではなく、雪の時期が終わったらできるだけ早く夏タイヤに交換するのが理想です。
空気圧を適正に保つ|高すぎ・低すぎは偏摩耗の原因
筆者撮影
空気圧が高すぎると接地面の中央付近、低すぎると接地面の左右だけの摩耗が進行しやすい偏摩耗となり、交換時期が訪れるのが早くなります。適正な空気圧に保つことも忘れないようにしましょう。
夏に使うとどうなる?燃費への影響は
スタッドレスタイヤを夏でも使い続けるのは走行安定性が低下するため、おすすめできません。氷の上でもすべりにくいことを重視して作られているので、ゴムの硬さ(夏タイヤより柔らかい)や溝の設計など、夏タイヤとの違いが多くあります。そのため、舗装路では夏タイヤと同様の性能を確保できるとはいえません。
具体的には舗装路ではスリップしやすく、急ハンドルや急ブレーキが不安定になりやすいのです。また、スタッドレスタイヤは排水性が悪く、豪雨などで路面上に水がたまった場所ではすべりやすいのもウィークポイントです。
ポイント解説
夏にスタッドレスタイヤを履くことで燃費への影響を心配する人もいるでしょう。スタッドレスタイヤが夏タイヤに比べると燃費が悪いのは事実です。しかし、昨今は技術が進化しているのでかつてほどの燃費の差はありません。運転の方法など、タイヤ以外の要因のほうが燃費への影響は大きいといえます。
オールシーズンタイヤとの違いは
昨今、「オールシーズンタイヤ」と呼ばれ、舗装路から雪道まで走れるタイヤが注目されています。メリットは、路面が凍結する地域でなければ、1年中履きっぱなしで対応できること。タイヤの履き替え作業から解放され、クルマから外したタイヤを保管しておく場所も不要です。
また、スタッドレスタイヤに比べると舗装路での走行安定性に優れ、雨に強いのも優れた特徴といえます。いっぽうで、氷の上ではスタッドレスタイヤよりもすべりやすいことが、冬用タイヤとして考えた場合のウィークポイント。凍結した路面を走るには適していません。
ポイント解説
オールシーズンタイヤにも寿命はあります。しかしスタッドレスタイヤほどシビアに考える必要はなく、上手に使えば5シーズンほどは利用可能です。また、摩耗もスタッドレスタイヤに比べると少なめです。
続いては、筆者が選ぶスタッドレスタイヤ4選
おすすめポイント
東北や北海道の主要都市における装着率No.1(※メーカー調べ)を誇るなど、絶対的な信頼が置かれているブランド「ブリザック」。最新タイプとなる「VRX3」は、過酷なコンディションでスタッドレスタイヤを使うユーザーから最も期待される、氷上ブレーキ性能が従来品に対して約20%も向上したのがポイントです。同社の独自技術である「フレキシブル発泡ゴム」の採用でゴムが硬くなりにくく、4年使用後もグリップ性能の低下を抑制します。
おすすめポイント
氷上性能に定評のあるブランド「iceGUARD」。最新モデルの「iceGUARD7」は従来品に比べて氷上制動性能14%、氷上発進性能15%、そして氷上旋回性能(コースラップタイム)7%向上と、凍った路面での性能がさらに進化しています。ゴムにはしなやかさを保つ「オレンジオイルS」が配合され、劣化促進試験では「適切に保管すれば4年後も摩擦力の低下は少ない」という結果がでています(※公式サイト)。
「ice GUARD7」を説明する公式動画がこちら
おすすめポイント
フランスのタイヤメーカーである「ミシュラン」が展開しているブランド「X-ICE」。日本の冬は世界的にみても凍りやすくてすべりやすい路面環境といわれていますが、ミシュランは海外のタイヤメーカーながら日本でもテストをおこない、日本の道路環境でもしっかり対応します。氷上性能は他社製品と比べてもトップ水準にあり、初期時の性能が長く効くようにゴム質や溝の設計も工夫。加えてドライ路面でのフィーリングなども良好です。
「X-ICE SNOW」を説明する公式動画がこちら
おすすめポイント
「ピレリ」はイタリアのタイヤメーカーで、自動車レースの最高峰である「F1」にタイヤを独占供給していることでも知られています。特徴は、高速道路まで含めた舗装路での走行安定性が優れていることです。ほとんど雪の降らない地域に住んでいるなど、スタッドレスタイヤは必要だけれど舗装路を走ることのほうがずっと多いという人におすすめ。価格がリーズナブルなのも魅力といえます。
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