「朝日宇宙フォーラム2022」が開催 13年ぶり飛行士募集、理由は?
「朝日宇宙フォーラム2022」が1月20日、JAXA後援のもと開催され、オンライン配信されました。JAXAの宇宙飛行士や研究者が参加して、13年ぶりに再開した飛行士募集や、宇宙開発の最前線を語りました。
油井さん「人類が協力すれば、夢はかなう」
基調講演は「宇宙開発と人類の未来」をテーマに、JAXAの宇宙飛行士グループ長・油井亀美也さんが登壇しました。
油井さんは2015年、国際宇宙ステーション(ISS)に約142日間滞在。その中でも、ロボットアームを操作し、ISSへと物資を運んできた日本の補給機「こうのとり」5号機のキャプチャ(つかまえる)に成功したときのことを、こう振り返りました。
「当時ISSが物不足になっていて、失敗すると宇宙飛行士が地球に帰らなければならない状況に追い詰められていました。けれども、アメリカの飛行士と協力して無事につかまえられた。新鮮なフルーツがたくさん届いたことが、とてもうれしかったです」
油井さんは、月面に宇宙ステーションをつくる「アルテミス計画」が国際協力で進んでいることを紹介。ISSで多様な国の宇宙飛行士と互いを尊重し合い、成果をあげた経験をもとに「人類は夢を実現できると信じて、仲間と協力する素晴らしい力を持っている。今後も協力していけば、人類の未来は想像する以上に素晴らしいものになるはずです」と語りました。
宇宙飛行士の油井亀美也さん
乳酸菌が宇宙へ「究極の予防医学を」
続く「企業セッション」ではJAXA有人宇宙技術部門きぼう利用センター長の小川志保さん、ヤクルト本社中央研究所・研究管理センター所長の長南治さんが登壇しました。
ISSには「100万分の1の重力」「外は高真空」といった特殊な環境が。それを生かし、多剤耐性菌の治療薬や人工血液の開発を目指すなど、多彩な研究が進んでいるといいます。
一方で、小川さんは「例えば人類が火星に行くには2年はかかり、宇宙に長期滞在することになります。骨量減少や免疫機能の低下、ストレスなどへの対応が重要になってきます」と宇宙開発の課題を解説しました。
小川志保さん
こうした課題に対する研究の一つに、JAXAとヤクルト本社が共同で取り組んでいます。
ヤクルト本社では、凍結乾燥した乳酸菌 ※L.カゼイ・シロタ株を含有するカプセルを開発。2014年にISSへと運び、宇宙でも乳酸菌が生きていることを確認しました。カプセルを飛行士が摂取して、体の免疫機能や腸内環境への影響をデータ収集しています。
※2020年4月以降はL.パラカゼイ・シロタ株と分類されています。
長南さんは「宇宙飛行士のミッション遂行にはベストな体調維持が必須。宇宙において究極の予防医学を実現すべく、共同研究を進めたい」と力を込めました。
長南治さん
飛行士募集、中川さん「ぜひ応募したい」
パネルディスカッションには、宇宙好きとして知られる歌手でタレントの中川翔子さん、基調講演に引き続いて油井亀美也さん、さらにJAXA有人宇宙技術部門・事業推進部部長の川崎一義さんが登壇しました。
川崎一義さん
視聴者から事前に寄せられた質問には「いつぐらいに月に日本人宇宙飛行士が行くのでしょうか」というものも。長年宇宙探査に携わってきた川崎さんが「アルテミス計画において、2020年代の後半には月に日本人宇宙飛行士が行くよう、頑張っていきたいと考えています」と展望を示しました。
月探査を見据えた訓練も、すでにスタート。「昨年は地質学の訓練を始めました。月に降り立ったとき、意味のあるサンプルをしっかり取れるよう、かなり実践的な内容です」(油井さん)。
中川翔子さん
後半は、JAXAが13年ぶりに始めた宇宙飛行士募集の話題に。今回の募集では、身長や学歴といった様々な条件が緩和されています。理系・文系などを問わず幅広い人材に門戸を開き、宇宙飛行士を目指してもらう狙いがあると言います。
川崎さんは「発信力を持った人も求めています。月などに行ったとき感じたことを、地上に戻って共有して欲しい。それは言葉だけでなく、絵や音楽かもしれません」。
中川さんは「ぜひ応募したいです。覚悟は必要だと思うのですが、今回の緩和は夢は誰でも持つ資格があるんだよと言ってくれているようです」と笑顔で思いを語りました。
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