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身体改造カルチャーを追って、20年以上。今回は、その最先端である「ボディハッキング」ともかかわる、国際ハッカー会議DEF CONの現場からのレポートをお送りしよう。
日本で「ハッカー」というと犯罪的なイメージが先行するが、軍事目的で生まれたコンピュータを一般に開放したのもハッカーだった。
20世紀初頭、ミサイルの弾道計算のために登場したコンピュータは、米ソの冷戦時代、核戦争を想定し、電話回線を使った非中心型の全米軍事通信ネットワーク「ARPA(アーパ)ネット」を構築するまでに成長した。冷戦終結後、ARPAネットはインターネットに繋がり、一般に開放されたことはご存知の通りだ。
確かに、ハッキング技術は犯罪やサイバー攻撃にも使われるが、ハッカーたちの自主独立の精神と情報の自由への拘りが最先端テクノロジーを一般に開放してきたことも事実だろう。
世界最大規模のハッカー会議の底力
国際ハッカー会議DEF CONは、1993年、ダーク・タンジェントことジェフ・モスのコンピュータ掲示板のオフ会として始まった。
毎年8月、DEF CONはラスベガスで開催され、2019年には2万5千人規模に成長し、世界最大規模のハッカーイベントとなっている。
主宰者ジェフ・モスが素晴らしいのは、ハッカーカルチャーを尊ぶ一方で、コンピュータ・セキュリティの国際会議「Black Hat」も同時開催し、国家や企業のセキュリティ部門によるリクルート活動に広く門戸を開いていることにある。
DEF CONのスタッフや優れたハッキング技術の持ち主にそれに見合う収入源を提供することもあるが、同時に国家権力や巨大資本のセキュリティ部門とかかわることでテクノロジーの独占や暴走にも敏感である。
2013年、エドワード・スノーデンが米軍のサイバー部門をけん引する「NSA(アメリカ国家安全保障局)」が米国民を含む、全人類規模の個人情報監視を行っていることをリークした際には、同年のBlack Hatの基調講演で当時のNSA長官キース・アレクサンダーが自ら釈明をしなければならない事態となった。その背景には、NSAがBlack Hatで派手にリクルート活動を展開していたこともある。
2015年、DEF CONの部会として「バイオハッキング・ビレッジ」が始まると、体内に埋め込むマイクロチップや「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャプ9)」によるDIY遺伝子改変などを含む、身体改造とハッカーカルチャーが交差した情報交換の場にもなってきた。
近年は、先のアメリカ大統領選挙で焦点となった選挙用電子投票システムのハッキング問題、COVID-19のパンデミックも見据えた個人の身体や医療の情報、ネットワーク型医療機器に関するバイオセキュリティについても話し合われており、大手メディアのニュースにもなっている。
コンピュータ・オタクのサクセスストーリー
国際ハッカー会議は、全米から大集結するコンピュータ・オタクたちにとっては、年一回の晴れ舞台でもある。一年間伸ばし放題だった髪の毛を特設ブースでモヒカン刈りにして、会議に挑むのも恒例の出来事となっている。
引きこもりの彼らが新しい友人や恋人や就職先をゲットするのがDEF CONのサクセスストーリーであったりするのだろう。若い世代の参加者たちにとっては、真面目な会議のあとのアフターパーティこそがお目当てであり、連日がお祭り騒ぎであった。
会議の会場において、興味深いのは、ハッカーの歴史を体感できることである。
長距離電話のタダ掛けから、南京錠などの鍵のピッキング、電子工作や対戦ゲームなどの体験ブースが揃っている。
また、世界各国からもいくつものチームが参加して、ハッキング技能を競う「CTF(キャプチャー・ザ・フラッグ)」も大いに盛り上がっている。
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国際ハッカー会議DEF CONは、2020年/2021年とオンライン開催となったが、リモートワークの増大に伴って、コンピュータ・セキュリティは誰にとっても日常的な問題になりつつある。loTやDXが進めば尚更だろう。
それぞれの個人の研究成果を皆で共有し、新たなアイデアを生み出していく、自主独立と情報の自由こそがハッカーカルチャーの原動力である。
かなり専門的な内容だが、貴重な情報がオープンに話し合われており、最もエッジな情報に誰でもアクセスできることが素晴らしいのだ。