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身体改造カルチャーの最先端の現場を追ってきた当コーナー、今回は、不死を目指す「トランスヒューマニズム」を紹介する。
トランスヒューマニズムとは「テクノロジーによって人類を次の進化の段階に押し上げよう」という思想だ。
たびたび紹介してきた、マイクロチップや電子機器を体内に埋め込む「ボディハッキング」よりも歴史は古く、サイボーグ技術や遺伝子改変などのテクノロジーによる身体改変の自由を主張してきた。
特に「人体冷凍保存(クライオニクス)」の民間科学研究には早くから着手していた。
今回は、冷凍された遺体を保管する巨大タンクが並ぶ、クライオ二クスの現場からのレポートをお送りする。
クライオニクスの最古参アルコー延命財団を訪ねる
世界には、クライオニクスを推進する団体がいくつもあるが、最古参のアルコー延命財団は、アメリカ・アリゾナ州に拠点に、1962年のロバート・エッティンガーの著書『不死の展望』をきっかけに、1972年、未来の医療に期待して、遺体を冷凍保存するために設立された。
冷凍保存に際して、人間を生きたまま冷凍することは法律的に難しく、死後2時間以内に遺体の冷凍保存処理を行い、氷点下196度の液体窒素で満たされた巨大タンクに安置している。
タンクひとつで全身なら4体、頭部だけなら45個入る。ナノテクノロジーによる遺体修復が可能になれば、脳だけの保存でも未来に蘇生できるといい、費用は全身2000万円、頭だけで800万円程度だ。現在は183人分が保管されている。(2021年8月現在)
蘇生法についての研究は定期発行の機関誌で報告される
トランスヒューマニズム信奉者レイ・カーツワイルは、著書『The Singularity Is Near(ポストヒューマン誕生)』(邦訳、NHK出版)で人工知能が人類を追い越すシンギュラリティを予言し、2045年と言われたその到来は、近年、2029年にまで早まっている。
シンギュラリティの議論から、トランスヒューマニズムも大いに盛んになったことは言うまでもない。
カーツワイルは、コンピュータ上での不死を望んでおり、遺体の脳からデータを取り出す「全脳エミュレーション」は、ロシア人資産家ドミトリー・イツコフの出資でランダル・クーネやその共同開発者であるトッド・ホフマンらが研究を進めている。
ちなみに、トッド・ホフマンは、2004年にいち早く指先にマグネットを埋め込んだ人物である。ここでもトランスヒューマニズムは、ボディハッキングと巧みに交差している。
2016年、アメリカ大統領選に出馬したトランスヒューマニズム党のゾルタン・イシュトヴァンは、不死の時代をアピールした。
欧米諸国では、人間と機械との融合やコンピュータ上での不死の実現がかなり現実的に語られていることを知っておいて欲しい。
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トランスヒューマニズムのもと、次々に夢のテクノロジーが実現していってくれると嬉しいが、クライオニクスにしてもあくまで富裕層の出資によって成り立ってきた民間科学研究であり、資金や権限にも限界がある。
未来の科学による永遠の生命を切望するあまり、カルト的な側面も拭い去れない。
一方、若い世代のボディハッキングの担い手たちは、トランスヒューマニズムから大きな影響を受けながらも、DIY精神を尊び、サイバーパンクなスタンスで、最先端技術をハックし、次なる時代を切り開いている。
驚愕の未来はもうすぐそこまで来ている!
Alcor Life Extension Foundation