ブックデザイナーの習慣と20年来の相棒「PARKER ソネット」【Moovooモノ語り】
Moovooモノ語り
その道の専門家や著名人が愛用品へのこだわりと、それにまつわる物語を綴る連載、「Moovooモノ語り」。第21回目となる今回は、伊坂幸太郎『逆ソクラテス』などの装丁を手掛けるブックデザイナーの名久井直子さん。たくさんの装丁を手掛ける名久井さんの一日は、毎朝その日にやるべきことを書き出すことから始まります。
その際には長年愛用している万年筆「PARKER ソネット」を使っているそう。今回はその万年筆について語っていただきます。
一日の始まりは万年筆で
わたしの一日は、今日やるべきことをメモに書き出すところから始まります。
仕事の締め切りはもちろん、誰かにメールをするとか、宅急便を出すとか、コーヒー豆を買うとか、とにかくなんでもやるべきことは書くのです。
それは長年の相棒の万年筆で書くのですが、完了したときに消していくのは太い鉛筆(これまた長い相棒の月光荘の鉛筆です)。
万年筆の全部のメニューが鉛筆で見えなくなったら、一日の終わりの合図。
同じ万年筆で5年日記(こちらも簡単なメモのようなものにしているので続いています)を書き入れて終了です。
ブックデザイナーになる前からの相棒
この万年筆を使い始めたのは1998年のことなので、20年以上愛用していることになります。
PARKERのSONNETという万年筆。
出会いをお話すると、会社員になった頃に遡ります。
わたしは大学を卒業してから、広告代理店に入社したのですが、入社試験の一次試験は、履歴書とともに、課題を提出することになっており、お題の一つは、当時クライアントでもあった「パーカー万年筆」の広告を考えるというものでした。
行き当たりばったりの大学生活だったので、広告代理店に募集があるよと友人に聞いて、その足で会社のある青山に資料を取りにいったら、受付の方に「明日締め切りですが、大丈夫ですか?」と聞かれたのを思い出します。
「大丈夫です!」と当時住んでいた所沢に急いで戻って、一夜漬けで課題を済ませ、翌日また青山に課題を提出に行ったのでした。
縁があって入社させていただき、一年目の秋頃に、パーカーの社販がありました。
せまい休憩所のようなところに並ぶ万年筆。
社販だったので、当時のわたしにも変える価格。見た目が気に入って購入しました。
せっかく買ったので、何か書くときは万年筆を使うようになり、それがきっかけで万年筆集めもしていました。
各国での出会い 思い出の品々
ざっと思い出せるだけでも、AURORAのLuna(こちらもSONNETと同じセルロイドの柄)、ドイツに行った時に買った子ども用のHerlitzの万年筆、強弱のある文字を書きたくてPILOTのHERITAGE(でも挫折)、イタリアではCAMPO MARZIOとDELTAで。
DELTAの万年筆は変わっていて、アロマテラピーの香りを染み込ませるところがついていました。
それからもう一つ長く愛用している、セーラー万年筆のシャレーナ。
「世界一細い万年筆」との触れ込みで、本当に細い14Kのペン先です。
これがものすごく書きやすくて、自ずと小さな文字が書けるので、手帳用に活躍しました。
しかも、コンパクトなボディなのに、カートリッジと、コンバーター(これをつけると好きなインクを吸い込んで使えます)が両方使える優れものです。
金の軸と銀の軸と両方持っているのですが、現在は残念ながら廃番になってしまいました。
これを打ち合わせで使っていると、いいなあと言われることも多いので、見かけたら購入して急なプレゼント用にストックしています。
でもなぜか、最初に買ったものより書き味がいいものがなくて、それはやっぱり使い続けていると調子がよくなるということでしょうか。
書くことも包むことも、手触り感を大切に
セーラー万年筆では「インク工房」というイベントも開かれていてインクブレンダーさんに、オリジナルのインクが作ってもらえます(現在はおやすみかもしれません)。
以前、わたしの愛猫の目の色で、編集者さんがインクを作ってプレゼントしてくださいました。
万年筆は、選ぶのが本当に楽しくて、書斎館や代官山蔦屋書店などに行くと、ついつい見てしまいます。
書き心地を試させてくれるところが多いので、ぜひお気に入りの一本(いや、二本でも三本でも)を見つけてみてください。
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