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「色」をアンテナで聴く政府公認のサイボーグ「Neil Harbisson」

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あなたは、この世に政府公認のサイボーグが存在することを知っているだろうか。サイボーグとは、人工臓器などの人工的に作られた物を身体に埋め込み、身体の一部を機械化した人間のことである。

アニメや映画などではおなじみの存在だが、はたして現実世界で活動するサイボーグとは…?

政府公認のサイボーグ

イギリス育ちの現代アーティストであるNeil Harbisson氏は、“政府公認のサイボーグ”として知られている。彼は生まれながらにして、色覚障害を持っていた。21歳のときに、頭蓋骨にアンテナを埋め込む手術を受けたことにより、アンテナのセンサーによって「音」を「色」として認識できるようになったのだ。

彼の存在は、世界的なカンファレンスである「TED」に登壇したことで、一躍その名を知られることになった。

Cyborg Foundationを立ち上げる


驚くべきことにNeil Harbisson氏の幼なじみ、Moon Ribas氏もサイボーグだという。彼女は腕にセンサーを埋め込むことで、地球上の各地で起きる地震をリアルタイムで感じることができるというのだ。ダンサーである彼女は、地震を腕で感じることでパフォーマーとしての表現の幅を広げたいと考えている。

そんな2人が、2010年に人々がサイボーグになるのを助け、サイボーグの権利を守り、サイボーグを芸術的および社会的運動として促進することを目的とした国際的な組織「Cyborg Foundation」を立ち上げた。

音声でも文字でもないコミュニケーションとは?

彼らのいくつかある活動内容の中から今回は、「Mesa&Cadeira」というブラジルの企業と共に開発した、コミュニケーションが可能なインプラント「WeTooth」を紹介したい。

「WeTooth」は、音声や文字を使うことなく、コミュニケーションとることができる世界初のインプラントである。条件は二人とも「WeTooth」が組み込まれているサイボーグであること。

「WeTooth」にはアクティベーターとバイブレーターが搭載されており、一人が歯に組み込まれたボタンを噛むことによって、信号がBluetoothにて送信される。送信された信号はもう一人の「WeTooth」により受信され口内のバイブレーションにより感知されるという仕組みだ。

2人はモールス信号を使いコミュニケーションをとり、相手から発信されたメッセージを聞くのではなく、読むのでもなく「感じる」のだという。音も一切出ないので、2人の会話はとても静かである。

「サイボーグ化」の目的とは?

では、なぜ彼らはこのようなインプラント「WeTooth」を開発したのだろうか。

Neil Harbisson氏とMoon Ribas氏の両名は、身体に埋め込まれた人工物から“人工感覚”と呼ばれる知性を発達させてきた。このことにより彼らは、より多くの人々にこの“人工感覚”を与えることで私たち人類をさらなる進化へと導きたいと考えているのだ。“人工感覚”があれば、人々はより直感的に、よりスマートになるとNeil Harbisson氏は語る。

脳内にアンテナを埋め込むことに「やりすぎだ」と感じる人もいるだろう。しかし、Neil Harbisson氏は熱帯雨林を伐採し資源を消費するより、テクノロジーを使って自分自身を変えることのほうがより倫理的だと考えている。そして、変化の激しい世界で生き残るためには、サイボーグになることは必要なのだと。

テクノロジーの進化は目覚ましいものがあるが、我々が持つ既成概念や先入観といったものもまた、時代の進化に応じて変えていく必要があるのかもしれない。

Neil Harbisson

Courtesy of Cyborg Arts Limited


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